風と波と大地の館

(*^△^*)自作BL小説です。 性描写あり。 R18。

第10章 時間軸 その1

2008/5/4(日)
俺は、松本に鏡を返した・・・
「ありがとう、松本」
「あ、あぁ」



椅子を借り、再び 『 風の本 』 を手に取った。
黒い和綴じの本の表表紙に、すれた梵字が・・・ゆっくりと右の人差し指で触れた。
指先から微弱な電流が流れ、体が撥ねた。
でも、指を離してはいけないように思えて、触れ続ける。
目蓋が重く感じて、目を閉じた・・・



真っ暗闇、音は聞こえない・・・
俺の体が強い力で引っ張られ、回転していくような感覚・・・
時間を遡っているのか?
吐き気をもよおしたが・・・ここは耐えないと・・・






空間が切り替わった。
氷室と松本の部屋ではない何処か・・・何処だ ここは。
洞窟?
俺は、そこには居ない・・・空気の様に俺を突き抜け、人が歩いていく・・・




18歳位と16歳位の兄妹の様だ。 黒装束を身に纏い・・・階段を降りていく・・・


注連縄がここかしこに張られ、神聖な場所に入ると、
そこには白装束の男が居た。


相当年月の経った、岩を彫られて出来たような龍が、口に水晶を銜えて鎮座していた。
あれは・・・白龍?!  白龍に似ている。


俺が知っている白龍よりも、厳つい表情だけど・・・ でも、確かに白龍・・・
角の形も・・・ひげも、ウロコの形も・・・ 俺の知っている白龍に そっくりだった。


あぁ、そうか・・・ここは 『 風 』 の本拠地か・・・
行った事なかったけど・・・龍風の社の中だ。





その兄妹は、白装束の男に跪いた。
何かを言っている・・・  聞き取れない!  もう少し傍に寄ろう・・・


「満智子、お前は本日より、教学部付とする。よいな!」
「はい、真雄(まお)さま。 ありがたき幸せに存じます」
「鐸斗(たくと)お前は引き続き、捜索せよ」
「はい、真雄さま」




「下がって良い」
「はい」


鐸斗と満智子の兄妹は、ゆっくりと立ち上がり、その場を離れた。




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第10章 時間軸 その2

ふと、視線を感じた・・・
振り向くと・・・真雄と呼ばれた白装束の男は俺の方を向き、微笑みかけた・・・えっ?!
偶然?  いや、違う・・・俺が移動しても・・・真雄は角度を変えて俺を見詰める・・・




「未来からの旅人よ、ようこそ。 何 怯える事はない、危害を加えるつもりはない 安心なさい。 話をしよう、こちらへ来てくれないか?」


俺に話しかけている・・・んだよな・・・やっぱり。
俺が見えるのか? この人・・・
ま、いいか・・・ 俺、実体じゃないみたいだし・・・な。




意識して、俺は真雄に近付いた。 もちろん全て信用したわけじゃねぇけど・・・
「名前は?」
「弘海」




好奇心からなのか、すげぇ愛想が良いコイツ・・・
「そう、弘海か」
「俺の声聞こえるのか? 姿も見えるんだよな?」




元から こんな性格なのか?
いや、でもさっきの見てたら・・・  すげぇ威厳ありそうだったのに・・・な。
「あぁ、表情が見えないのが残念だけどな・・・姿はシルエットだ。 声は聞こえるよ 弘海」
「そうか、シルエット・・・ね」



微笑みながら真雄は言う。  俺に触れるか触れないか・・・すげぇ 近寄り方だ。
「俺に会いに来てくれたのか? 未来から」
「そういうわけじゃねぇけど・・・  俺の大切な仲間が、『 風の呪詛 』 に囚われてるんだ。  助けたい」


俺は、単刀直入に言った。
お愛想してる場合じゃねぇんだ 俺は。
早いとこ切り上げて、拓弥を取り返してぇ・・・
いや、椎崎を助ける方法を何とか・・・拓弥はその後で良い。



「呪詛だと? そんなバカな、出来るはずがないぞ それは」
困惑した表情で、ジェスチャーまで付けてる。 俺、外人さんじゃねぇって・・・


呪詛が出来るはずがねぇって?
でも、俺の居る未来、呪詛していやがるぜ、『 風 』 は!! それも、複数で。




「龍神乱世が始まってるんだ」
俺は、吐き捨てるように叫んだ。



俺だって、こんなの嫌だよ・・・でも、でもそれが宿命というのなら、やるっきゃねぇだろが!
困惑した表情が一変して、真面目顔になった。 ちょっとばかり怖ぇ・・・その表情怖ぇって。




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第10章 時間軸 その3

弘海は吐き捨てる様な叫び声を上げた。

「龍神乱世が始まってるんだ」
俺の言葉に驚き、瞬きをして・・・
真雄の口調は低く落ち着いた声になった。

「・・・・・・っ・・・そうか、それで。  しかし、呪詛など無理だ。  それより、ここに来れたという事は 『 龍覡の兄弟 』 か?」




「兄弟には・・・なれなかったよ。 真雄は知ってたのか、勝龍の暗示・・・」
「もちろんだ、俺は 『 風 』 の後継者だからな・・・そうか、残念だったな それは・・・」




何と言って良いか わからないって表情・・・
真雄は、今の所 俺に対して友好的だ。
でも、いつ何時 手のひら返した様になるかもしれない・・・なにせ 『 風 』 だからな。




「真雄、『 呪詛返し 』 について 教えて欲しいんだ」
「弘海、残念だが  教える事は出来ない。  すまない・・・実は先代より前、過去に文献を焼失してしまって・・・今、教義に関する事が 全然わからないんだ。  俺は一族の中から、霊力の高い能力者を選び、教学部を発足させたばかり・・・  先程、有力な候補を任命したんだ」




真雄は、本当に すまなそうな表情になった。
過去に焼失!!  ええぇぇっ!!そんなのありかよぉ・・・ガックシ!!
俺、ここに飛ばされてきた時、『 呪詛返し 』 何とかなるかもって、期待してたのに。




「満智子って言ってたね。  じゃぁ・・・あの人が、俺のお祖母さんだ♪」
俺、初めて お祖母さんの顔見た・・・・・・結構可愛いじゃん♪
そう言えば、お祖父さんの顔も俺 知らねぇや・・・親父の顔から判断すると・・・うーん。




「満智子の孫か!  弘海は、風の一族なんだね! 嬉しいよ 俺は」
真雄の表情が一変してキラキラと輝いた・・・




まるで・・・期待に胸膨らませた少年の様だ。
俺は、なんというか・・・  どうしょう・・・  心苦しいぞ!!




「真雄・・・ でも俺は、風の一族じゃないんだ。  ごめん真雄」
「いや、いいよ。 弘海は  龍覡なんだからな」




微笑みは耐えない・・・  なんだろう、この人・・・
俺・・・なんか  この人と居ると調子狂わされるかも・・・
まったりしている場合じゃねぇのに・・・和んじまっている俺が居る・・・
やばすぎ俺!! しっかりしねぇと。





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第10章 時間軸 その4 蛇の皇子 6

2008/5/3(土)
拓弥は地の一族に呼ばれ、依空矛姫納(えあだのむきな)大蛇の巣穴にいた。
「わかった。 行こう映理樹」




いつまでも、こうしているわけにも行かず・・・俺は腹を決めた。
大蛇のとぐろを巻いている岩盤の下か・・・
ゆっくりと立ち上がり ふら付きながら、近寄っていく。




一歩、また一歩・・・
悪寒が体を這い、鳥肌が立ちっぱなし・・・
やらなきゃなんねぇなら・・・とっととやっちまおう。
いつまでも、ウジウジとなんて・・・
俺は、ヒロの元に早く戻らなきゃ・・・だし。




数匹の大蛇は、俺が近寄るごとに道を空ける様に地を這い、移動する。
奥のひときわ大きな蛇・・・依空矛姫納 姫だろ、あれが・・・
映理樹の姉姫か・・・
とうとう矛姫納姫の目の前まで・・・この大蛇の岩盤の下を通るって・・・
何処にも穴とか見あたらねぇ・・・どうすんだこりゃ・・・




矛姫納姫と目が合った!
足が震える・・・そりゃそうだろが・・・俺よりでかい蛇軍団だぜ!!
俺は、か弱き人間だ・・・うん。




武器を持っていなけりゃ、人間の戦闘能力なんて、たかが知れてるだろが。
太い胴で巻きつかれ、背骨を折られて・・・とかよ。
毒牙を体に打ち込まれて・・・とかよ。
色々あるだろが・・・




・・・あぁ、本当 俺って情けねぇ奴。
女蛇軍団は、俺に友好的に振舞ってくれているのに・・・俺自体が恐れおののいて・・・




『 くすっ・・・タクヤは決して臆病なんかじゃないよ。 大好き、タクヤ♪ 』
「え、映理樹・・・なんで・・・  あ、俺の心が読めんのか・・・  もしかして、ここに居る蛇達みんなか?」




『 うん。 僕達は音で言葉を伝えないからね。 意思の疎通は、人間より はるかに高いんだよ。 タクヤったら大声でさっきから叫んでるし・・・くすっ 』
げげっ!! 俺がチキンだって・・・バレテルし・・・ガーン!!!!!




『 だから、タクヤは 臆病なんかじゃないってばぁ。 くすくすっ 』
『 拓弥・・・さぁ、急いでください。  映理樹・・・時空の扉が開きます。  気を付けていくのですよ。  拓弥に、わがままを言うんじゃありません。  拓弥は弘海の伴侶です。  忘れてはいけませんよ、映理樹良いですね 』




『 はい、姉上・・・でも、タクヤ好きだし。  タクヤが僕を好きになれば良いでしょ 姉上 』
『 いけません、映理樹。  拓弥は弘海の伴侶です。  横取りは、いけません 』
・・・・・・・・・っ・・・な、何を・・・俺モテてるみてぇだが・・・微妙だ。




もしかして、ヒロと映理樹で・・・俺を取り合いになるとか?!
いや、それは・・・・・・ねぇだろが・・・
ちょっと嬉しい気もする・・・




はぁ。 何言ってんだか俺・・・
今朝の様子じゃ・・・そんな事ありえねぇって。
あ・・・俺、なんか落ち込んできた・・・




「なぁ、時空の扉って・・・何だ?」
俺は疑問を口にした。
なんか、やばそうな言葉の響きなんだけどよ・・・




俺の言葉に、矛姫納姫は首をかしげ・・・俺の背中に違和感を覚えた。
どうやら映理樹が俺の背にいるようだ。 負ぶさっているのか映理樹は・・・




『 拓弥の力を借りなければいけないのです。  だからこそ拓弥でなければ時空の扉は開かない・・・力を貸してください拓弥。  拓弥の中にある、風巫子弘海の力を 』




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第10章 時間軸 その5 蛇の皇子 7

2008/5/3(土)
えっ!! 俺の中にある弘海の力を・・・って。
『 時空を越えて過去に遡るには、扉が開くだけではダメなんだ。 巫子の力が必要なんだ。 僕は、どうしても戻らなきゃならない・・・ずっとこの時代に閉じ込められて、僕 本来の姿に戻れない・・・タクヤごめんね。 僕に力を貸して 』




「あ、あぁ そりゃ・・・いいけどよ  じゃ映理樹・・・過去を遡るって どうやるんだ」




脈拍が速くなるのを感じる・・・過去を遡るだと!!
知らなかった・・・ってか・・・ヒロの力って・・・
わからない事ばっかで、動揺しまくり・・・




矛姫納姫は、顔を歪めた・・・ドキッ
たぶん笑いかけたんだろうけど・・・怖ぇ!目が笑ってねぇし!!




『 拓弥の情液を、この岩盤のこの円盤の上にかけて下さい 』




げげっ!! 俺の情液って・・・じょ、冗談!!
全身の血の気が引くのを感じる。 体が冷たく感じる・・・


情液をかける?! 俺のか・・・無理! 絶対ぇ無理だって!!
見られてて立つかよ、しかも・・・この状態で・・・
いくら俺がエロい男だっていってもだな・・・




『 くすっ、ごめんねタクヤ冗談じゃないんだ・・・ 僕、手伝うから・・・ ね、いいでしょ♪ そうしないと時空の扉が開かないし 』




俺の背にかかる重力が、いきなり倍増した!! えっ!!ちょっと!!
映理樹の体型が変化し、俺よりも大きな体躯に・・・げげっ!!もしかして蛇化か?!
振り向くのが怖ぇ・・・マジ怖ぇ・・・
映理樹、一体何をしようって・・・!!!




う、うそっ!!
ちょ、ちょっと待ってくれ・・・うわっ!! 映理樹!! 止せ!!
ズボンに手をかけられた感触が・・・ほっ、蛇化はしてねぇ・・・・・っ・・・じゃなくて何すんだ!





ゆっくりと股間を、まさぐっている!!
映理樹・・・止めてくれ!! そんな、容姿して するなよ・・・俺は、罪悪感が・・・
いたいけな幼い子供が、俺の股間を まさぐるなんて・・・
切なく胸を締め付けた・・・息子を儲けるなら、こんな感じって、いうイメージが・・・





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第10章 時間軸 その6 蛇の皇子 8 ※R18

2008/5/3(土)※R18
『 僕は今、子供の姿じゃないよ・・・タクヤ 本来の姿に変化してるから・・・でもすぐに解けちゃうんだ。 だから気にしないで気持ちよくなって タクヤ大好きだよ♪ 』




えっ!! 本来の姿って・・・うっ!!
うなじに映理樹の吐息がかかる・・・身長が俺より高い様だ・・・
股間を、まさぐっているはずの手は見えない・・・しっかり弄られているのに・・・だ。


しかたねぇ・・・
俺は、目蓋を閉じた・・・ そうするしかねぇなら・・・
おとなしく身を任せた。


冷たい指先が、下着の中に入って来た。
しびれるような快感が、俺の体を駆け巡る・・・
かなり・・・いい・・・


マジ、いいかもしれねぇ・・・
あっ・・・はぁっ・・・うっ・・・くぅっ・・・
呼吸が乱れていく・・・


胸の粒まで、映理樹は弄り始めた・・・
冷たい・・・
冷たさに立ち上がり、鋭くなった感覚が 俺の身を焦がす・・・
快楽に溺れそうになるのを、必死でこらえ・・・




『 タクヤ・・・いっぱい感じていいよ・・・さぁ・・・もっと、もっと感じて 』


あぁ、そうだったよな・・・ 情液が必要なんだっけ・・・
我慢しちゃ、いけなかったぜ・・・
けど・・・




『 しょうがないなぁ・・・タクヤったら・・・ じゃ、ちょっと しちゃおうか 』
映理樹の楽しそうな声が、頭の中に響いた。
えっ?! 何を、しちゃおうって?




俺のズボンを膝下までずらして・・・げげっ映理樹!! ちょっと待て!!
秘穴のあたりを撫で回す・・・
俺の先走りを、たっぷりと塗りたくり・・・っておい、ま、まさか!!




『 タクヤ好き・・・大好きだよ・・・タクヤ 』
強烈な痛みが、俺の体に走る!!
「ぎゃぁ――――っ!!」




エロい俺は・・・入れる事はあっても、入れられた経験などない!!
しかも、こ、こんな状況で・・・人以外の物に・・・犯られるだなんて・・・




『 ご、ごめんタクヤ・・・痛かった? もう少し我慢して、交わるのは初めてなんだ僕 ごめん本当に、すぐに気持ちよくさせるから 』




映理樹は、そう言うと・・・ぬぷぬぷと異様な位・・・液状の分泌物が・・・滴り出す。
俺とヒロが交わる時は、こんな風に濡れたりはしねぇのに・・・な。


段々、激しく交わる・・・俺は喘ぎ、映理樹から与えられる快楽に身を委ね・・・
痛みに縮んだ俺のファルスは・・・立ち上がり、高みに上がっていく・・・
矛姫納姫と目が合った・・・どきっ!!




えっ、ちょっと!!
矛姫納姫まで、俺の股間に手を伸ばし扱き始める・・・
し、しかも・・・俺のファルスを口に銜え・・・ぎょぇ――っ!!怖ぇ!!
で、でも・・・現金な俺のファルスは・・・矛姫納姫に吸われて反り返り・・・




「あっ、あっ、ああっ・・・や、やだっ・・・ま、まってくれ・・・や、め・・・姫、やめて・・・映理樹、待て・・・や、でる、出るから・・・あぁぁあぁぁぁ―――っ!!!!」




姫は素早く退き、俺の情液は大量に降り注いだ・・・映理樹の操縦が良かったのか、
丁度指定された岩盤の円盤のくぼみに・・・流れ込んだ。
な、こんな・・・大量だなんて・・・恥ずかしい事この上ない・・・




映理樹は、俺の中から ゆっくりと引き抜き・・・
俺は力なく崩れ落ちるのを・・・映理樹に支えられた。





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第10章 時間軸 その7 蛇の皇子 9

2008/5/3(土)
『 ほら 良く見て、タクヤ   タクヤの情液を 』


俺の服を素早く治し、映理樹は俺の頬にキスをする。
映理樹の体は、青白く透明に透き通っていた。 霊体?
でも・・・通り抜けずに触れられる。 霊体ではないのか・・・なら何だ。
俺を抱きしめている感触は 力強い・・・  人では無い物だからか。


確かに、映理樹は あの幼い姿ではなかったし・・・妙な気分だ。
映理樹の声のままに・・・姿が別物だなんて。
呆然と映理樹を見詰めていた。 



『 タクヤ見てったら・・・ 』
あぁ・・・岩盤を見ろって事か。




俺の放った大量の情液は、流れて円を描いている。
窪みに入って模様を描き出す。
・・・・・・・・・っ・・・こ、これは!!


見たことがある・・・俺は確かにコレ、この形・・・この文字を!!
ヒロのアイテム・・・魔方陣の文字・・・そのまま・・・だ!


青白く光り輝き・・・どんどん光が強くなる・・・
天井にまで・・・光が強く・・・眩しくて目を閉じた。




『 さぁ、タクヤ・・・行こう  早く、こっちだよ 』




目を開くと、目映い光の中に扉が大口を開けていた。
マジかよ・・・これが時空の扉?!


けど、今の俺には 歩く体力はない。
というよりも・・・体に力が入らねぇ・・・
なさけねぇけど、しかたねぇだろが・・・初めて受け入れたんだし。
溜息を付いた。


これって、やっぱり・・・浮気って事になんのかな・・・
いや、俺が愛してるのはヒロだけだし・・・浮気じゃねぇよな・・・


映理樹だって、俺の情液が どうしても必要で・・・
俺が、なかなか出せなかったから・・・仕方なくあんな事したんだし。
不可抗力だよな・・・うん。


理由を無理やり こじ付けて・・・俺は自分自身に納得させた。
強い力に引っ張られ・・・吸い込まれていく・・・




「うわぁ―――――っ!!!」
『 地の皇子を頼みましたよ、拓弥 』 遠くで矛姫納姫の声が、聞こえた様な気がした。




何度も回転し、気持ちが悪い・・・
ヒロ、ヒロ・・・俺のヒロ!! すまない、こんな事になって・・・なるべく早く戻るからな。
俺が愛しているのはヒロだけだ、俺を信じて待っててくれ!! ヒロ!!




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第10章 時間軸 その8 蛇の皇子 10

うわぁ――――っ!!
俺は叫びながら真っ暗い中を、回転しながら吸い込まれていく・・・
空間が赤く染まり・・・光物が俺の後ろから前へと飛んでいく・・・




目を凝らしてみると・・・球の画面の様だ・・・球体の中に動画が映っている。
赤いのは火!! 血と炎!!
ありすぎて、赤く空間を染めているんだ!!




・・・・・っ・・・戦争!!
うぐっ!!  悲惨な情景に嘔吐した。 何度も何度も・・・


終戦記念日などに放映される、白黒の映像は見た事もある。
学校での授業で、取上げられたりしたし・・・
親に連れられて、戦後の悲惨な写真展とかにも行った事もあった。


だが、こんな生々しい映像は初めて見た。
ボカシも、カットも、トリミングもない・・・そのままの記憶・・・か。
・・・誰の記憶なんだコレは・・・




『 タクヤ、ごめんね。 強烈だった?  コレは僕の記憶・・・ 地下から僕の透視能力で人間界を視守って来た記憶だよ・・・人間は本当に血生臭いのが、好きらしくてね。  強烈過ぎるなら 目を閉じていて、タクヤ 』


青白く発光しながら、俺をしっかりと抱きしめて、どんどん過去に遡っていく映理樹。

映理樹自体が長い胴をくねらせて、上へと上昇している。
蛇と言うよりは むしろ・・・龍に近いかもしれない。

城さんに呼ばれて行った、あの空間を思い出した。
白と青の龍が寝そべっていた・・・あの龍達の形に・・・今の映理樹は似ている。




『 そうか・・・タクヤは風覡の城や、白龍と青龍にも会ってるんだね。 だったら僕の事、話しても大丈夫かな 僕を怖がらないで タクヤ 』




映理樹の事・・・って・・・映理樹お前は・・・
上を向いたまま、映理樹は喋り出した。
その時の映理樹の、悔しさ・・・切なさ・・・やりきれない様な思いが、
俺の頭の中に、直接 感情として流れ込んでくる・・・




『 ある日、『 龍の鏡 』 で未来から来た旅人に、 『 龍の剣 』 で斬りつけられ、僕は自分の体から分離した。 その旅人に封印されたまま 意識だけ未来へ飛ばされ、地下に閉じ込められて、何世紀も過ごした。  僕はずっと待っていたんだ。 『 龍覡、巫子 』 の能力を持った人間が、生まれてくるのを 』




何世紀って・・・おい、それじゃぁ・・・映理樹お前の居た時代っていうのは・・・
映理樹は長い体を波立たせ、スピードを上げた!
しっかりと映理樹に掴まってないと・・・
大きく揺さぶられ、体が千切れそうな感覚に慄き目をつぶった。




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第10章 時間軸 その9 きらめく水 16

2008/5/3(土) ―水の祠の洞窟―

琉依は達海様に指示を受け、潤の元へ来ていた。

今日診察してもらえるようだ・・・早速用意をしなくちゃな・・・
達海様の身支度が出来次第、こちらに来られるだろうし。
あ、でも・・・雪江様との逢瀬が先か・・・くすっ。


潤には、まだ食事は与えない・・・点滴のみだ。  
これも修験者として認める儀式のための用意。
儀式が終わるまでは・・・食事を与える事は出来ないんだ。


診察が終わるまでは、消毒も止めておかなくちゃな。
着替えとシーツを取り替える位はしておこうかな・・・
リネン類を入れてある引き出しから、清潔なシーツなどを取り出し、
用意万端整え、潤が寝ている部屋へ




携帯が鳴った。   表示は達海様からだ。
「えっ、はい・・・わかりました。 あの俺は・・・はい、ではそういたします。 わかりました。 お気をつけて行ってらっしゃいませ、氷澄さま」


急患で、今日の潤の診察は取りやめになった。
雪江様との逢瀬を邪魔されたらしく 氷澄様は随分とご立腹で・・・

まぁ・・・氷澄様なら 達海様同様、外科医師としても有能だから心配しないけど。

じゃぁ・・・今日は、俺と潤の二人きりか・・・まぁそれも良いけど。
消毒とシーツの交換と体の清拭をしておかなくちゃ。




潤には結び目1つで簡単に裸体に出来る 簡易の浴衣を着せてある。
俺は、潤の布団を捲り上げながら囁いた。
「潤・・・ 包帯を外すよ。  患部の消毒をするからね」



うなづいた。
潤の股間が立ち上がっているのが目に映る・・・




匂いがした。
これは・・・
潤・・・ くすっ。
しょうがないな・・・本当にもう。
若いからな・・・


「潤。 ここ、きついかい。 待ってて・・・後で楽にしてあげるからね」




指先で簡易浴衣の上から 先端に軽く触れた。
股間は小刻みに震える。 感じているね・・・

潤の頬が赤く染まった・・・可愛い。
俺の可愛い潤・・・

熱く滾る様な感覚を覚えた・・・やばっ!
もっと触れたい欲望を抑え込み、視線をずらして・・・両足の包帯を外していく。




腫れている・・・
患部に熱を持っているな・・・膿がたまっているのかも・・・
患部の周りを少し押してみる。




俺の腕を手探りで触り、しがみつく・・・ 潤・・・
「痛むのかい?」




首を左右に振る・・・ 痛むわけではないのか。

「膿がたまっているようだから、切開して出そうかと思うけど いいかい」
うなずいた。




「ちょっと待っていてね・・・用意してくるから」
うなずいた。




膿を出すのか・・・痛そうなんだけど。
俺の足・・・あれから感覚が消えてる。
あの我慢出来ない位の痛みは何処へ?




痛み止めの注射をしてもらって一晩寝たら・・・
痛みどころか 足の感覚までないって どういう事?
まさか、俺の脚、このまま動かなくなる・・・なんて事ないよね。
怖くなって、琉依の腕にしがみついた。




痛いわけじゃないでも、恐怖の方が・・・強かったんだ。
相変わらず、俺の声は出ない。
琉依が用意のため部屋を出て行った。





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第10章 時間軸 その10 きらめく水 17 ※R18

※R18
2008/5/3(土)―水の祠の洞窟―

俺、恥ずかしくて、全身が燃えるような熱さを感じる。
股間がしっかり立ち上がってるのを 知られてしまって。
後で楽にしてくれるって・・・そんな事言われて余計に興奮する。




可愛い三波じゃなくて・・・琉依に欲情している自分に・・・
バスルームで琉依にしてもらった感覚が、よみがえり・・・
声を聞いただけで、反応してしまう 体に戸惑う。


簡易服に先走りが滲んでしまっているのを感じる・・・
どうしよう・・・マジに恥ずかしいって。




さっき琉依が軽く触れた所から、電流が流れたみたいに・・・
俺は興奮して、腰が動いてしまって・・・自分で制御できなかった。
あぁ・・・琉依に扱いてもらいたい。




怪我をしていない方の手で、浴衣の紐を引き外し、
広げると外気が触れ、鳥肌が立った。
俺は自分の股間に触れてみた・・・
うっ・・・こんなになって・・・マジ恥ずかしい。
琉依・・・琉依・・・  あぁっ琉依・・・




俺の手で、琉依の扱き方を真似てみた・・・
俺の指が濡れ腹を濡らす・・・溢れて止まらない・・・
肌に、先走りが垂れ、外気に触れて・・・冷たさを感じる。




あぁどうしよう・・・触れなければ良かった。
我慢できない・・・ どうしよう 止まらない!!
ティッシュ何処だっけ・・・えっとぉ・・・  あぁっダメだ・・・指を外せない!!
琉依・・・琉依・・・もっとしてっ!!
琉依に触れられている事を想像してしまう・・・あぁ琉依!!




いやらしい水音が耳を打つ。
部屋に響く・・・こんな大きな音だなんて・・・




ドアが開く音が聞こえた!!
やばい!! でも止める事が出来なかった。




「・・・・・・・・っ・・・潤!! こらっ、いけない子。 くすっ 俺を待ってなきゃダメだろ」




あ・・・・ ど、どうしよう! 琉依に見られた・・・ すぐ来るのわかってたのに・・・
ちょっとだけって思ったのに、止まらなくなっちゃったんだ・・・




「しょうがないなぁ、こんなにしちゃって・・・くすっ。 こっちを先にしてあげるよ  潤 いっぱい感じていいよ。 さぁ楽にして・・・」




琉依の指先が、俺の唇に触れて・・・ゾクッとした。
冷たい指先・・・
唇から顎・・・そして首筋・・・




暖かい物に俺の唇が覆われた。
ヌメヌメとした柔らかい感覚・・・琉依の唇と舌か・・・
俺の唇から割り込み口内に侵入する・・・ドキッ!!




冷たい指先が鎖骨を擽り、徐々に俺の胸の粒へ移動していく・・・




あぁ・・・琉依・・・そんなっ!!
触れて欲しい部分に触れてもらえないなんて・・・




後もうちょっとで触れるのに・・・
触って、そこっ触ってくれよ・・・琉依!!




俺 そこ触って欲しいのに・・・いじって欲しいのに・・・
あっ、あぁっ・・・いいっ、琉依っ・・・琉依っ・・・もっとぉ!!
胸の粒を口に含まれて、俺の体に快楽の電流が走る!
喘ぐように、俺は体を しならせ仰け反らせて、体が自然に ひく付く。
あっ・・・それいいっ・・・しゃぶって欲しい・・・もっとぉ・・・強く吸って!!




強弱を付けながら扱く指先に翻弄され俺は、驚喜する・・・あぁいいっ!!
もっと・・・してっ! してくれよっ! 琉依っ! 意地悪ぅ!!
目に涙が滲む・・・感情的になる・・・興奮してるのに。




触って俺に触ってよ!! 苦しい・・・触って!!  感じ過ぎて怖い!!
あ、あぁっ・・・そこっ もっとぉ・・・ 時々、俺のして欲しいように触れてくれる・・・




怪我のないほうの指で、琉依を誘導するも、俺の思う様には触れてくれない・・・
わかってるはずなのに、意地悪ぅ!!
琉依・・・琉依ぃっ・・・あんっ、るい―――っ!!



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第10章 時間軸 その11 きらめく水 18

2008/5/3(土)―水の祠の洞窟―

見えない目に、今は包帯を巻いていない。 俺が外した。
美しい淡い青の目・・・潤・・・  瞳が涙で潤んで、何も映さない。
・・・でも、なんと艶やかな色気を 発するんだろう。




俺は完全に欲情している。
認めるよ・・・俺は潤を抱きたいんだ。
このいたいけな、少年を抱きたいんだ 俺は。




経験も それほど無い・・・
いや、潤は男女どちらとも最後までしていないと確信している。
この無垢な体に、修験者として 『 水の誓い 』 を立てさせるなんて・・・と。
最初は、可哀想で・・・認めないでくれと達海様に頼んだ。
でも、今は・・・




虚ろな表情・・・俺の指先で感じて、体を ひく付かせ、
吐息が甘えた様な喘ぎに似てくる・・・
たまらない・・・な。




俺の股間も張り詰めている・・・潤の中へ解放したい・・・けど。
それをしちゃったら・・・


俺の思いを遂げてしまったら、どうなる・・・
それをするのは、達海様で無ければならない・・・
俺は、修験者である潤を抱く事は許されないんだ。




潤が修験者でなかったら・・・
氷澄様もお許しになるかもしれないのに・・・
潤・・・ 潤・・・ 潤・・・ 俺の・・・潤・・・



自然に目に涙が集まり・・・潤の麗しく淫らなその様子が、ぶれて見える・・・
切なさに身を焦がすとは・・・こんな感じなのか・・・
どうする事もできない口惜しさに・・・体が震える。




あぁ、俺は・・・  潤が欲しい・・・
なんで、こう上手くいかないんだろう・・・



潤は、俺の手管で こんなに感じてくれているのに・・・
快感に酔いしれて・・・
俺を受け入れてくれそうなのに・・・


でも、俺には許されない!!
潤は修験者だ。


修験者なんだ!!
くそっ!! 俺は、あきらめなきゃならない!!


俺が、水のTOPであったのなら、こんなに悩みはしないのに!!
いずれ・・・ 近いうちに・・・ 潤は達海様に・・・



・・・・・・っ・・・このまま、潤をどこかに連れ去ってしまいたい。


激しく、時に緩やかに・・・潤を高みに追い詰めていく・・・
俺の葛藤を・・・伝えるように・・・
俺に しがみつき、悶えながら・・・甘く喘ぐ潤・・・
可愛い・・・俺の  潤・・・




いや、そんな事・・・潤の命が・・・
俺の欲望で、潤の命を消す事は出来ない。
俺は・・・



潤を、誰にも奪われたくない・・・
潤・・・

潤の胸の粒を口に含み、ひときわ強く吸い上げると・・・ 俺の手の中で爆ぜて・・・


俺・・・
俺は・・・
お前が欲しいよ・・・ 俺のモノにしたいよ・・・ 俺だけのモノに・・・




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第10章 時間軸 その12 

弘海は、過去に遡り、龍風の社の中で、真雄と向き合っていた。

俺は疑問をぶつけた。・・・何でこんなに落ち着くんだろう・・・不思議な男だなぁ。
「真雄と満智子って兄妹なのか?」
「あぁ、俺の上に もう二人兄が居る。 俺は三男で、四男が鐸斗、次が長女の満智子と次女の楓(かえで)の6人兄弟だよ」


うわっ、6人も・・・兄弟が居るのか・・・羨ましい。
でも、何で三男が後継者なんだ?





山荘の椎崎の部屋に結界を張った後、俺の部屋で海斗に聞かされた事を思い出した。
血生臭い俺達の時代の 『 風 』 の実態を・・・
奴等が海斗の大切な百瀬を襲った理由も・・・


あの時・・・海斗は、能力の強かった先代の話も少ししてくれていた。
その先代が・・・今、目の前にいる真雄なら・・・


俺・・・冷や汗が・・・  まさか・・・とは思うが・・・
真雄が亡くなった、本当の理由は・・・もしかして・・・


確か、その先代は35年も・・・伴侶が見付らなかったって・・・
海斗は19年だから早い方だって言ってたけど。


いや、過去は変えちゃいけねぇ・・・ 変に変えたりすると・・・ 人が消える・・・
生まれ出るはずが、生まれなくなる・・・絶対過去は変えちゃなんねぇんだ。


ダレカガ、オレヨリ  マエニ  カコニ  サカノボリ、
ジブンノ  ツゴウノ  イイヨウニ、カエテ  シマッテ  イナケレバ。





・・・・・・っ・・・えっ!!!!!   ちょっと待て・・・   それって・・・
・・・誰かの声が頭の中に聞こえてきた気がした・・・嘘だろっ!!
・・・でも・・・でも・・・もしそうなら・・・疑問が解ける・・・


俺の龍覡の兄弟は、何故、生まれなかったんだ?
なぜ、親父の先回りをすることが出来たんだ?
見付ける条件さえ、親父しか知らされていなかったって・・・
昨日親父が言っていたジャンか。




・・・誰かが・・・過去に遡り・・・龍覡の兄弟を・・・消そうと企てた 奴がいる!!!!!






「真雄、上の兄貴達は 亡くなったのか?」
「えっ?  いや、もちろん生きているよ。 ・・・・・・っ・・・あぁ、俺が後継者だからか。  くすっ、後継者になれるのは、ある条件を満たさないとダメなんだよ。  だから仕方がないんだ」




やっぱり!!
じゃぁ・・・    真雄は・・・
いや、今なら まだ間に合うかも・・・




勝龍の暗示は、覆される事は 過去の時代には無かったという。
ならなぜ今の時代では それは可能なんだ?

その能力を身に付けたものが現れ・・・
都合のいいように修正しているとしか 考えられない。




誰かが意図して、企てた過去を 元に戻す事が 可能かもしれない・・・

あるべき姿に俺が戻してその結果、俺が消える可能性が・・・
例え そうだとしても・・・やはり俺は・・・



俺は決断を下した。
親父、彩音、拓弥・・・
俺は決めたよ。
この時代に俺は、降り立つ。
龍覡の三兄弟の出生のため・・・いや、全ては俺のため・・・かも。


このまま何もしないで・・・負け戦でぼろぼろになって、ジ・エンドなんて、
俺には我慢出来そうにないんだ。


ここに来れたのは きっと、それが俺の宿命だろうし・・・な。 いや、試練なのかな。
拓弥が傍に居てくれると、甘えてばっかりだったし・・・
俺の今の力で何処まで出来るか・・・わかんねぇけど。
やるだけやってみるからさ。


腹を決め、頭に浮かぶ言霊を呟き続ける・・・どんどん頭の中に流れる言霊を・・・
理解不能な言葉だけど・・・感情が入る・・・


俺の願い届け!! 風龍神の風に乗り、天かける天龍に跨り、勝龍神の元へ・・・ 俺の願い・・・
俺の体は輝き始める・・・目映い光に包まれて・・・吸い込まれていく・・・
岩に彫られた・・・白龍神を祀った 『 風 』 の本尊の水晶球の中へ・・・





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第10章 時間軸 その13 きらめく水 19

2008/5/4(日)

見舞い客の動向を見るため 時間を見計らって病室の前に行くと、な、なんと・・・
ドアの隙間から、淡い緑色の光が漏れていた!!


「氷澄様!!」
「しっ!!」




「どうやら、治癒能力の様だな・・・あの子供」
「治癒能力!! あの子が!!」




すぐに、ドアが開き 中に居た親族の兄弟らしき2人が出てきた。
俺達を見て、一瞬固まったが、すぐに会釈して去っていった・・・


「いくぞ、琉依」
「はい」



ベットの上に、彼は すやすやと寝息を立てていた。
手早く、俺は上掛けを外し、包帯などを外し 患部を露出させた。




「これは!!   すごいな・・・ やはりあの子供、予想以上だ」
氷澄様は、ゆっくりと患部の状態を診ると、元通りにした。




確かに・・・完治しないまでも、これなら数日で 通院だけで済むようになるだろう・・・
「これが、あの子供の能力ですか・・・ 命が消えても おかしくない位の患者が こんなに回復してしまうとは」




「そうだ、  あの子供・・・  さすがにエナジーの消耗して まともに歩けてなかったが・・・  医師として、うらやましい限りだな くすっ」



うらやましいって・・・いうか・・・末恐ろしいって言うか・・・
氷澄様・・・何を考えていらっしゃるんだろう・・・


「さて、行くか琉依。 潤の様子を見なければ・・・ な。」
「はい。 氷澄様」


潤、待っていてくれ・・・すぐに行くから。
昨日の潤・・・ 足の具合が気になる・・・ 悪化してなければ良いんだけど。
俺じゃわからないしな・・・




昨夜の潤の様子を、階下に降りていく間に 氷澄様に報告する。
「そうだ、 琉依・・・そろそろお前も嫁が欲しいだろ」
「えっ!! 氷澄様。  いえ、まだ俺はそんな・・・」


話の切り替わりに、ビックリした。 いきなり何を言い出すんだろう。


「25歳になるんだろ・・・子を欲しいと思わないのか?」
「はい、それは・・・ 欲しいとは、思いますけど」
子供か・・・ 俺の血を分けた子供・・・ 欲しいような、欲しくないような・・・




「お前の好みを聞いておこうと思ってな。 どうせなら好みの女性が、いいだろ?」
「はぁ・・・まぁ・・・」




「どうした?  誰か もう心に決めた女が いるのか?」
「えっ、いえ そんな事は・・・ 俺 女はちょっと・・・ 興味がなくなってしまって」
どうしよう。 っていうか・・・ 俺・・・ 今は・・・




「・・・・・・それは、男を抱きたくなったって事か? 琉依」
「い、いえっ・・・俺はそんな!  潤に、欲情するなんて事は ないです!!」
ドッキーン!! お、男を抱きたくなった・・・ 俺が・・・ 潤をっ!!!




「ぶっ!  琉依・・・何を焦っている、くくっ・・・ そうか、あの修験者に・・・ねぇ・・・」
「氷澄様!! ち、違います!! 決してその様な事はっ」




うろたえ、全身が熱くなるのを・・・
氷澄様は、意味ありげな目を俺に・・・あぁっくそっ!!
知られてしまうなんて・・・
俺・・・ どうしたら・・・
潤・・・





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第10章 時間軸 その14

すぅ・・・と体が 吸い取られる感覚がした。
眩しくて目が開けられない・・・いや、肉体は無いのだから・・・その表現もどうかと思うが・・・
風を切る音が聞こえる。
どんな空間を通っているんだろう・・・ 興味がわいた。
眩しさをこらえながら、ゆっくりと目を開けた。




光・・・金色の光、銀色の光が交差して・・・どこかで見たような図形・・・
あぁ、そうか・・・DNA配列の図形だ・・・
光り輝くそれに、俺は引き込まれ・・・どんどん奥へと引き込まれていく。




光だらけのその空間・・・球形がいくつも周辺に浮かんでいる・・・
その中を勢い良く引き込まれる・・・
どの位の間 そうして移動したのだろう・・・時間の感覚が掴めない・・・
数分間か、数十分間か・・・いや、ほんの1、2分だったのかもしれない。




すぽっ!! という感覚がして、急に暗い空間に出た!
目が慣れるのに・・・ 時間はかからなかった。
まぁ、肉体がないのだから・・・ かかりようもないか。
そこは、草木が一切なかった。
砂漠?!  ・・・岩肌がむき出しになった山がある・・・
何処だここは? こんな所、日本にあったか?




俺は、とりあえず風に乗って 岩山の山頂に向かった。
黄土色の岩肌をむき出しにした 山の空気は乾燥している。
風が通るたび、砂が舞い上がる・・・
何処へ行けば良いんだ・・・ 俺は、どっちへ行けば良い?




こんな時、俺に教えてくれる龍のペンダントは・・・・
俺の肉体と一緒に未来にあるわけだし。
どうする。 アイテムはない・・・感が頼りか・・・親父ならどうする?




うーん。
闇雲に飛び回っても・・・な。
地形もわからないんじゃ、行動のしようもないか・・・
俺は空高く上っていった。
高度をとれば、地形が わかるんじゃないかと思って。




空は青く澄み渡り、雲はなかった。
下を見下ろすと、島・・・だ。
小さな島・・・エメラルドブルーの海が周りを取り巻いていた。
周りを見渡すと 本土らしい大きな大陸が見えた。 ・・・仮にその方向を北とした。


島は南北に長い楕円形で、北方に俺がいた岩山が・・・
中央に砂漠・・・
南側に、うっそうと茂る森があった。
俺は、どちらに行こうかと迷ったが・・・
森に入ってみる事にした。




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第10章 時間軸 その15

誰か居ないかな・・・俺は風に乗り森の中を探索した。
色鮮やかな蛇・・・虫・・・蝶・・・蛙・・・鳥・・・・ジャングルかよ! まさかなぁ。
かさかさと音を立てながら、木々の間から飛び出してくる。
ドキドキしながら周りをみて飛んでいた。




猫・・・まだらの猫発見!! 短毛の猫だ!! わりと大きいな。
俺の方を見てビクッとして・・・素早く森の中へ走り去った。




まさかとは思うけど・・・俺に気付いたの??
まぁ、猫は霊力があるっていうし・・・
別に不思議じゃないか・・・




どんどん深くなる森・・・日光が射さないんじゃないかって思える程。
つたが絡まっている大岩を発見した。
大岩の後ろに窪みを見つけた。
砂や草に覆われて埋もれている。
少し、風を送って吹き飛ばすと石段が現れた。




慎重に降りていくと、トンネルが・・・人工トンネルか? 削ったような壁面だ。
壁面に薄く絵らしきものが描かれていた。
中高生の落書きか?
いや、違うだろう・・・俺は過去に遡っているはずだから。




トンネルを進んで、分かれ道に差し掛かった。
3つあるうち俺は左の道を選択した。
しばらく行くと、川が流れていた。 地下に川が流れているのか・・・




それを通り過ぎ、しばらく行くと広場に出た。
黄色い光が、目映くその広場を照らしていた。
中心に水晶の大きな結晶が・・・塔の様に そびえ立っていた。
金色に輝く大きな結晶だ!!




場所を間違えたのか?
俺が行かなきゃならないのは・・・勝龍の居る所だ。
ここは、神聖な場所だろうけど・・・
水晶の塔・・・




俺は、その場から立ち去ろうと移動し始めると、
水晶の塔の後ろから、猫が現れた!!




あの、まだらの猫だ!!
俺の方をじっと見詰めている。
・・・・・・・・・俺は、ここから移動してはいけない様な気がした。
何故かはわからないけど・・・そんな気がしたんだ。





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第10章 時間軸 その16

俺は、ゆっくりと、まだらの猫に近付いた。
今度は、猫は逃げなかった。
俺は、まだらの猫の真ん前に降りた。
自然に跪き、頭を垂れた・・・・・・ どうしてそうしたのか・・・ 自分でも良く分からない。
でも、そうしなきゃ いけない気がしたんだ。



まだらの猫は、俺の頭に尻尾で触れた!
瞬間、俺の頭の中に映像が雪崩れ込んで来た!!




身分の高そうな、男が水晶の塔の前に、たたずんで居た。
そして・・・えっ!!




現代人?!
少年が・・・
俺と同じ位の年齢に見える、気の弱そうな少年が一人・・・
その高貴な男の前に跪き、挨拶をしている。




少年は震えている・・・
何だ? 何でそんなに震えているんだろう。
少し観察した。  身分の高そうな男は、威圧的に・・・
いや、そうじゃない・・・声のトーンがそう思えるだけで、




その少年は、言葉が わからない様だ。
あ、でも・・・確かに日本語とは 違うな・・・
俺には、この高貴な人の言っている意味が、直接 頭に伝わってくるけど・・・
少年は・・・ きっと緊張しまくりで、余裕が ないのかな。
それとも少年には、テレパシーが通じていないのか?




・・・・・・っ・・・なら、なんで現代人が、この空間に居るんだ?
俺と同じ能力でないのなら・・・ どうして過去へ遡れるんだ?
過去へ遡るのは、覡と巫子の能力のはず。

覡、巫子ならば、テレパシー能力がある。
龍神の意志を受信する事が、必須項目だから。




俺は、とても不安になった。
・・・・・・・・・っ・・・おい、まさか・・・嘘だろ!! 俺は目の前の光景に息を呑んだ。
少年はポケットから小さな棒を取り出すと、高貴な男の懐めがけて突き刺した!!
なっ!!




目映い光に、視界を奪われ・・・ 俺は吹き飛ばされた!!
ふっ・・・と、俺の額あたりに何かが触れた・・・ 猫が俺の額のあたりを舐めている。
いや、実際には・・・肉体は ないのだから・・・ 感覚がするだけなんだけど・・・




映像は消え・・・ あの少年はどこにも居ない。
元の静かな、水晶の塔が見えた。



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第10章 時間軸 その17 蛇の皇子 11

・・・・うっ・・・・・うっぷ・・・気持ちが悪ぃ・・・乗り物酔い?か。
いや、乗り物って言うか・・・何ていうか・・・


空間にある物体が全部・・・流れる模様になって・・・
高速移動すると景色が線の様に流れるだろ・・・アレだ。


まだ到着しねぇのか・・・映理樹・・・
少しスピードが緩んだ。
『 タクヤ・・・大丈夫?・・・ 少し休憩する? 気分が悪そうだ・・・ 吐きそうかい? 』




休憩って言ったって・・・ 休憩できんのか? この空間内で・・・
『 この辺にある時代に降りれば、どうって事ないし 』




そう言われて、周りを見渡すと・・・緑色の球体が浮かんでいる・・・
戦争中ではないようだ・・・ だけど・・・
タイムトラベラーに付き物の・・・ アレがあるだろが・・・
『 くすっ・・・ わかったよ、 じゃぁ、人間の居ない場所に行こうか 』




人間の居ねぇ場所って・・・
無人島とかか??


映理樹は横に大きく旋回した・・・えっ!!
『 うん、そうだよ。 神聖な場所だから滅多に近付かないんだ。 くすっ 大丈夫、怖がらないで・・・僕が居るんだからタクヤ 』




別に俺は・・・ 怖ぇってわけじゃ・・・
いや、確かに・・・ これ以上、大蛇の中には入りたくねぇけど・・・
『 くすくすっ・・・タクヤったら さぁ、行くよ! 』




たくさん浮かんでいる球体の内の・・・緑と黄緑の混じった球体の中に吸い込まれた!
えっ!!! うわっ!



吸い込まれてすぐ、まぶしい光に包まれ・・・きつく目をつぶっても目が痛ぇ!!
しばらくして目が慣れたのか、周りが見えてきた。


む、無人島・・・ぽい・・・  思いっきり無人島っぽい・・・ガーン!!
ジャングルかよ・・・  うっそうとした森の中に降り立った。


映理樹は、また消えた・・・声は俺の頭の中に直接聞こえるから、傍に居るんだろうけど。

『 タクヤ・・・ここからずっと まっすぐ獣道を歩いて・・・ 』




「あぁ・・・わかった。 まっすぐな」
とすると・・・やっぱりアレか・・・蛇のお仲間さんたちに・・・ ぞぞっ!!
足元に蠢くものに俺は鳥肌が立つ・・・  虫・・・それも、毒々しい色の虫の大群・・・
迷路のようなジャングル・・・うっそうと茂る木々に絡まるのは、つたや・・・蛇・・・や・・・
み、見たくねぇ・・・ 背丈の高い草を分け入り俺は歩くスピードを速めた。




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第10章 時間軸 その18

あれは・・・いつの映像なんだろう。
弘海は、瞬きして まだらの猫を見詰めた。
猫は首をかしげ・・・ゆっくりと、水晶の塔の裏側に歩いていく。
途中で振り返り俺を見詰める・・・ついて来いって事か。
起き上がり 俺は、後を付いて行った。




水晶の塔の裏側に、岩で作られた棺があり・・・
中に石化した人間が寝ていた!!!


先ほどの映像に出てきた、高貴な男だ!!
あの、小さな棒で懐を刺されて・・・その結果、石化しているって事?!
あの小さな棒は、一体何だ?  ・・・魔力?
それとも・・・俺の龍のペンダントの様な・・・エナジーを引き出すアイテムなのか?




ふと、まだらの猫を見ると、俺を見詰めていた。
えっ!! 俺に どうしろっていうんだ?
俺、石化を解く方法なんて知らないぜ?!



もう1つの可能性に思い当たる・・・
この猫、俺がここに来る事わかっていて、


・・・・・・・・・・・っ・・・ま、まさか!!
この人が、先の龍神乱世期の勝龍とかって言うんじゃないよな?!





まだらの猫は、笑った  様に見えた・・・げげっ!!
う、嘘だろ!!


どうすんだよ・・・俺、勝龍をあてにして来たってのに・・・
先代の風のTOP・・・ 真雄の時代の修正をすれば、
何とかなるっていいう俺の読みは見事にはずれ・・・
あー・・・ 俺は、頭を抱えたくなった。


じゃぁ、じゃあさ・・・あの気の弱そうな少年が、
俺の兄弟の出生を邪魔した犯人なのか??


俺、絶対 『 風 』 に関係する奴等だと 思っていたんだぜ!!
あれ、どう見ても、 『 風 』 のエナジーじゃないよ・・・





俺は、ゆっくりと・・・石化した高貴な男に触れてみた。
失礼は承知の上だけど・・・


まだらの猫は、俺の邪魔はしない・・・いいのか?
あの少年が突き刺したあたりを触れると・・・炎を連想した!!


えっ!! 炎って・・・『 火 』 のエナジー?  な、なんで?
あの少年からは、『 火 』 のエナジーなんて感じられなかった・・・
俺は動揺を抑えられない!



魂が帯電しているのは 『 水 』 に視えたのに・・・なんで 『 火 』 なわけ?
他のエナジーのアイテムは、使えないって親父がいってた・・・


あ・・・混血?!
『 水 』 と 『 火 』 の混血か・・・
それとも・・・パートナーが 『 火 』 なのか・・・


あの映像では高貴な男の他には、あの少年一人だけしか居なかった。
・・・・・・映っていないだけで、近くにパートナーが居たとか?
いや、変だろそれじゃ・・・ 近くに居たなら、あんな風に怯えるだろうか。
うーん。




・・・わからない!! 親父ぃ!! わかんねぇよ俺!!
泣き言 言いたくなった・・・あー・・・もう!!
イライラする!!






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第10章 時間軸 その19 大地の巫子 1

勝龍神の力を借りて、真雄の時代に仮の肉体を得るという、
予定は見事に粉砕し、弘海は石棺の傍に力なく座り込んだ。


「椎崎を助けられたとしても、風の呪詛がある限り、誰が狙われても不思議じゃねぇし。
『 龍覡の3兄弟 』 を生み出すために・・・動かなきゃいけねぇと思ったんだけど」



はぁ、これから、どうしょう・・・何かヒント無いのか? 俺は溜息を付いた。





まだらの猫は、ゆっくりと俺の周りを回り、しきりに匂いを嗅いでいる。
俺は苦笑した。 魂だけの状態で、匂いってあるんだろうか。


座り込んだ俺の膝の上に乗って、俺の胸に前足を引っ掛け、
俺の顔あたりをしきりに舐めている・・・
不思議な気分だ・・・


肉体が無いのに、舐められている感触がするなんて。
それに・・・この猫は、勝龍に仕える特別な存在だったんだろうし・・・
何をしているんだろう・・・俺を舐めて・・・






・・・・・・・っ・・・なっ!!
まだらの猫の体が内側から輝き始めた!!
青白く強い光が俺の視界を塞ぐ・・・
俺は顔を背け・・・光が治まるのを待った。
徐々に静まり・・・猫を見ようと視線を戻すと・・・えっ!!




美しい・・・女性が居た。
白く輝く肌はみずみずしく・・・
柔らかそうな黒髪を一束にまとめて垂らしていた・・・
年のころは・・・そう・・・18か19歳位に見える。
品の良い・・・高貴な姫といった感じがした。


その婦人は、にっこりと微笑むと、俺の頭を両手で押さえ、自分の胸元に押し付けた!!
えぇっ!!!!
俺は、難なく吸い込まれた!!
その婦人の肉体の中にだ!!・・・いや、まだらの猫が婦人になって・・・えぇと・・・


体全体に衝撃が走った!!
微弱電流が流れるっていうか・・・意識が遠退く・・・
かすかな・・・意識の中で俺は・・・声が聞こえた気がした。
『 かわいい坊や、私の坊や・・・ 安心して生まれておいで・・・ 』






覚醒したのは、暖かな赤い空間だった。
人の話し声がする・・・でも、よく聞き取れなかった。
ここは、どこだろう。


液体の流れるような音と、大きな時計の音が体に伝わってくる。
身動きをとるのに一苦労だ。 手足を動かすのにも、かなりの体力を要した。
疲れる・・・


大きな揺れを感じた。 そして、揺り篭の様な揺れが しばらく続いた。
眠い・・・異様に眠い・・・ 目を閉じると、意識が遠退く・・・





苦しい・・・苦しい・・・ 何だ、どうしたんだ急に・・・ 苦しい!! 助けてくれ誰か!!
押し潰されるような苦しさを、目を開けると・・・周りが何もかも真っ赤だ!!


細いトンネルを、押し潰される苦しさと痛みを感じながら、ゆっくりと押し出される。
これが長く続けば俺は、消えてしまう!! 焦ったが、どうする事も出来ず・・・
揉みくちゃにされながら、明るい場所に出て、ようやく息を吸い込んだ・・・
「あぎゃ――っ!    あぎゃ――っ!」





へっ?!
赤子の鳴き声がする・・・ 産婦人科か? ここは・・・
目を開けても、明るい事しかわからない・・・
目が見えない・・・ すっげぇ不安!!
し、しかも・・・体を動かせない・・・
叫んでも、赤子の鳴き声しか聞こえない・・・不安!
俺・・・どうしちまったんだ?




そこで、思い当たる・・・
生まれたのか?   俺・・・ 俺が赤子に生まれたのか?


愕然とした・・・

確かに仮の肉体を得たいとは思ったさ。
けど・・・それは、赤子じゃなくて・・・

せめて動き回れる年頃の肉体が良かったんだけどな・・・




「まぁ、可愛い・・・珠の様に美しい男の子ですよ。 おめでとうございます」
中年女性らしい声が聞こえた。




日本語だ・・・いや、そう聞こえているだけかもしれねぇけど。
自然に意識が遠退いた・・・





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第10章 時間軸 その20 大地の巫子2

弘海が 次に覚醒したのは、何処かの部屋だった。
真上に優しい音色で鮮やかな色のメリーが回っている。
どうやら俺は、ベビーベットに寝かされているようだ・・・




急激に腹が減った。 うぅっ・・・何だこれは!! こんな、痛い程の腹の差込は!!
涙が滲む・・・ 急激な腹の差込と空腹が、どうにも我慢できず・・・声をあげた。
「あぎゃーっ、あぎゃーっ!!」




俺の鳴き声に、誰かの足音が近付いた。
ベビーベットの上から覗いたのは、あの 『 まだらの猫婦人 』 だった。
とろける様な笑顔を見せ、俺の頬をツンツンして抱き上げると、
「ぱいぱいでしゅかぁ〜♪」




・・・うっわっ・・・ちょっとぉ・・・俺は、まともに視線を合わせられない・・・
まだ若く美しい娘・・・だぜ?!
素早く胸元をはだけて・・・薄っすら上気した白い肌・・・ふっくらとした胸が、ドアップ!!
俺の口に胸の粒を含ませようと!!
ま、待ってくれ・・・ちょっとぉ・・・




俺は全身が暑くなる。 ドキドキドキ・・・
そ、そりゃぁ・・・グラビアアイドルとかの写真集で、お目にかかってはいるけど・・・
年頃になって、こんな間近になんて・・・
女性経験の無さ・・・が祟ったか? でも、マジ恥ずかしいって・・・


あ、いや・・・今俺は、この婦人の赤子なんだから・・・でもしかし・・・
背に腹は変えられない・・・俺、腹がめちゃくちゃ減ってるし・・・仕方ねぇ。
俺は、ありがたく吸い付いた・・・ごきゅごきゅと音を立てながら飲み込む・・・




とっても安心した・・・それが何故なのか わからない・・・けど。
この匂い・・・体温・・・心音?・・・
腹が落ち着くと・・・急激に眠気が・・・





べた付く気持ち悪さに目が覚めた。
異様に下半身が気持ちが悪い・・・ムズムズするし・・・




・・・・・・あっ!!  ・・・もしかしなくてもアレか? ガーン!!
オムツ?  あ―――っ!!嘘だろっ!!


うぅっ・・・ しかたねぇ・・・知らせよう・・・このままじゃ、気持ち悪いし・・・
泣き声を上げて俺は知らせると・・・
すぐに、母がやって来た。
乳母なわけねぇよなぁ・・・母だろやっぱり・・・




羞恥プレイかよ・・・  何が悲しくてこんな・・・
ううっ・・・せめて、こういうのは  俺の意識のねぇ時にでも・・・して欲しいぜ。




股間を清潔にされて俺は、すぅっと気持ちよくなった。

・・・・・・っ・・・気持ちよすぎて放尿してしまった!! ガーン!! 
な、なんて事を!! 俺は自分で自分が恥ずかしくて仕方がなかった。

母は、目を見張り・・・くすくすっと笑うと、
再度清潔にしてくれた・・・感謝♪




・・・・・・・・・っ・・・あぁ俺・・・これずっと続くのかと思ったら、気が遠くなった。
恥ずかしすぎる!!
いくら 母といえ、放尿瞬間から一部始終見られてんだぜ!!
しかも俺・・・16歳の男の意識しっかりあるし・・・
あー、どうせなら・・・意識も赤子にしてくれよ!!





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第10章 時間軸 その21 大地の巫子3

弘海は 体を清潔にされたあと、抱き上げられて何処かへ連れて行かれた。
母は俺を胸に抱きながら廊下を静かに歩いていく・・・
よく通る声で朗々と、お経?が聞こえている・・・多分お経だろう・・・
寺院?・・・目に映るのは、母の顔と母の胸元だけ・・・




どんどん 読経の声が大きくなる・・・ 近付いてるんだろうなぁ・・・と。
胸の鼓動が自然に早くなる・・・怖い! 言い知れぬ その言霊のもつ空気に恐怖を覚えた。
俺の恐怖は、自然に泣き声となり、母はムズガル俺を優しくあやしながら・・・
その場に近付いていく。




読経の声は朗々と留まる事なく流れ続ける。 俺は吐き気を覚えた・・・何だこれは!!
ようやく終わったのか、急にその場が静けさに包まれた。
「失礼いたします。  仁似誼(ににぎ)様、和子(わこ)様をお連れいたしました」




「来たか  岩永姫(いわながひめ)待ちわびたぞ・・・ 名は何と申す?」
「はい、仁似誼様・・・ 恭成(みつなり)と申します」





ふーん・・・母は、いわなが姫って言うのか・・・  ん? いわながひめ・・・石長比売?!
あの日本神話に出てくる・・・木花佐久夜毘売の姉の石長比売?? と同じ名前だ!


・・・・・う、嘘ぉ!!  だって・・・母は美しい姫ジャン。
石長比売は醜い代わりに・・・

生まれた御子は雨が降っても風が吹いても石のように永久に生命がある

んだろ?? もっと、名前の付けよう無かったのかよ!!



あ、俺・・・『 みつなり 』 って名前付けてくれたんだ・・・
みつなり・・・か・・・ふーん。 ・・・・・・っ・・・古くさ〜〜
あ、まぁ俺過去に遡ってるんだし、
でも・・・『 真雄 』 は結構イケテル名前なのに・・・   ま、いいかぁ・・・





仁似誼と呼ばれたその僧侶は 俺を覗き込み、
にこやかなその表情が、見る見る豹変し驚愕に変わった。

「そうか、恭成と申すか・・・・・・っ・・・こ、これは!!」
「・・・・・・はい、和子様は・・・・・・碧眼にございます」




「お、おぉ・・・して、  宝珠の印は?」
「はい、ございます。 胸に・・・青の宝珠が」
母は、俺の着物をはだけ、胸を露出させた。




い、嫌だ!! 俺は嫌だ!! この男!!
仁似誼は俺の肌に無断で触れ、つつっと胸の辺りを撫で回す!!




触れられたくなくて、俺は泣き出した!!
母は、ぐずる俺を何とか なだめ様と必死だ。


俺は見逃さなかった・・・母が俺をなだめている間に、変化した仁似誼の表情を!!
口元が奇妙に歪み、人相が悪くなった事を・・・  こいつ、この男は危険だ!!
俺は、鳥肌が立った。




( 第10章 目次へ )


※石長比売の記述は、神々の宴より引用させていただきました。



第10章 時間軸 その22 大地の巫子4

弘海の意識は恭成という赤子の体の中にいた

「まさしく、巫子となられるべき宝珠の印だ・・・すばらしい!!」
「で、では・・・恭成は」
爛々と目が輝き・・・仁似誼は、舌なめずりした・・・  ぞぞぞぞっ!!




「大地の民の巫子・・・ゆくゆくは、龍覡となられるであろう素質がある」
「あ・・・ありがとうございます」



「数え10歳に召し抱えとする わかったな」
「は、はい・・・ありがたき幸せに存じます」





えっ? 召し抱える?! 誰を?
えぇっ・・・も、もしかしなくても・・・俺をって事か?! じょ、冗談だろ!!
俺、この男に召し抱えられたくねぇって・・・近付くだけで吐き気するし!!
それにしても、平気なのか? わが子を差し出すなんて!!




母を見上げると・・・震えていた・・・
何かを我慢するように 憂いを帯びた悲しそうな表情で小刻みに震えている・・・


まだらの猫姫は・・・母の姿を借りていただけなのか?
それとも母が、まだらの猫姫だったのか・・・


少なくても・・・今ここに居る母は、俺を手放したくない様には見えた。
何か弱みでも握られてんのか? この男に。
母に、こんな表情をさせる この男が許せねぇ!!


っていうか それより・・・俺の体に青の宝珠が埋め込まれてるらしい!!
さっき触れられた時、硬い物を中に押される感触がした。
俺自身には見えねぇけど・・・ もしかしてこれって・・・
俺の 『 龍のペンダント 』・・・あの青水晶球が体に埋め込まれてんのか?




だとしたら・・・俺、凄く嬉しかったりする。 けど同時に、不安になる。
仁似誼のあの表情だ!! 何か良からぬ事を企んでいるじゃねぇのか・・・





母は、一礼をすると俺の身なりを正し、抱き上げてその場をあとにする・・・ほっとした。
硬い表情で黙々と廊下を歩く・・・
俺は不安になった・・・ 母の様子が・・・


何度か角を曲がり、先ほど俺が寝かされていた部屋に戻って来た。
ベビーベットに再び寝かしつけられ・・・俺は睡魔に襲われた。
こんなに眠いものなのか・・・赤子の体は、もどかしい。




ふと気付くと、俺は歩いていた!!目の前には大きな池がある。
えっ? 何だ? 俺、赤子のはずだろ?!

「みつ様、あぶのうございますよ・・・ おやつをお持ちしました みつ様」



中年女性の声に俺は振り向いた・・・ みつさま? 俺の事か・・・
俺は小走りに走り、その女性に近寄った・・・ は、走ってる・・・
目線も、子供の物だ・・・



時間の経過が・・・・・・ 俺が新しい命として生まれたのではなくて、
誰かの体を共有しているのか?
『 みつなり 』 という男の人生を辿ってるんだろうか。



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第10章 時間軸 その23 大地の巫子5

弘海の意識は、恭成という子供の体の中にいた。

中年女性の顔を見た・・・見覚えは無いけど・・・ 感じのいい婦人だ。
俺は縁台によじ登り、腰掛けた。
「ありがとう」




その中年の婦人は、にっこりと微笑み・・・
おやつは暖かいほうじ茶と一緒に俺の横に置かれた。
小鉢に入った煎餅だ! 見るからに旨そうで唾液が滲む。
おやつに手をのばそうとすると、その手を取られ 濡れ手ぬぐいで拭われた。




縁台から腰掛けて見える風景は、日本庭園だった。
俺が腰掛けている建物に見覚えは無い・・・
といっても・・・赤子の時の目線でしか見てないけどな。
でも、場所が違っている感じがする。
空気が違う・・・あの時の尖ったような空気が感じられない。 この場所は和む・・・





「かか様は、もうすぐ お戻りになられますからね・・・」
「かか様、どこへ行ったの」


困った様な表情をして、中年の婦人が 『 みつなり 』 の頭を撫でながら言う
「かか様が お戻りになられるまで、この顕彰院(けんしょういん)と一緒に遊びましょうね」
「うん、けんしょーいんと 遊ぶぅ」




・・・・・・決して俺が言っているわけではないし、俺の行動ではない・・・
俺は・・・
『 みつなり 』 と体を共有して・・・ 意識を保ちながら・・・
『 みつなり 』 の行動を見ているのか・・・


ちょっと待て・・・ だとすると・・・
俺が危険と判断して、この 『 みつなり 』 に知らせる方法は、あるのか?
ていうか・・・回避出来んのかよ・・・


俺は物凄く不安になった。
あの仁似誼から、この 『 みつなり 』 を守んなきゃ いけねぇんじゃねぇかと。
俺がこの 『 みつなり 』 の体の中に居る理由は 何だと考えると・・・それが妥当な線だろ。
偶然とはいえ・・・宝珠と呼ばれる青の球を、体に埋め込まれて生まれてきた 『 みつなり 』 ・・・か。





俺は、『 みつなり 』 とコンタクトを取れるかどうか試してみた。
『 みつなり、みつなり聞こえるか? 俺は、弘海だ・・・みつなり聞こえるか 』



『 みつなり 』 は、あたりをキョロキョロと見回している・・・
聞こえて入るらしい・・・が、言葉として理解できているかな・・・
『 みつなり、鏡の前に行ってくれ・・・ 』



『 みつなり 』 は、立ち上がり、パタパタと廊下を駆けていく・・・
「みつ様、どちらへ行かれるのです」
「うん、ちょっと」



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第10章 時間軸 その24 大地の巫子6

弘海の意識は、恭成という子供の体の中にいた。

いくつ目かの部屋の前を通り過ぎ、目的の部屋らしき襖を開けた。
机の上に硯箱があり・・・『 恭成 』 と名が入っていた。 『 みつなり 』 ってこの字か・・・
止まった先に鏡台があった。 全身が映る大きさだ。
四苦八苦しながら、恭成はカバーを外す。




鏡を見た・・・・・・・・・っ・・・俺・・・だ! な、何で俺が鏡に映っている?!
少し癖のある黒髪も、親父譲りのコバルトブルーの瞳もそのままに・・・


ただ、1つ違った点がある。 体の大きさだ。
鏡に映ったのは、幼稚園に行き始めた年齢の時の俺だ。


彩音の荷物と一緒に保管してある あの貸し倉庫の中にアルバムがある・・・
そこに貼り付けてあるの俺の写真を見れば、きっと同一人物だと思うだろう。
それ程、鏡に映る姿は似ていた。





俺は、鏡の中の自分に、挨拶をした。
『 俺が、弘海だ。 恭成・・・よろしくな 』



通じるだろうか・・・っていうか俺の存在に気付くだろうか、恭成は・・・
一瞬目を見張り、徐々に蕩ける様な笑顔を見せた。 恭成の笑顔は母親譲りか、可愛いぜ。
「ひ ろ み?  ひろにぃ〜♪」



両手を鏡について、俺に触ろうとする・・・ わかってくれたのか・・・な・・・チョイ不安。
「ひろにぃ〜 僕の中にいるんだね。 嬉しい」
えっ!! おい、理解できてるのか? マジに?



『 わかるのか、俺が・・・恭成とは別の人間だって・・・ 』
「うん、僕・・・ 見えるモン・・・ 色んなの。 かか様は、誰にも言っちゃいけませんって。 ひろにぃ〜信じてくれる? 妖精さんがい〜っぱい飛んでるんだよ ここも、あっちも」




えっ! ・・・妖精さんって・・・ マジに?
霊魂とか見えるのか恭成は・・・



『 あぁ、信じるよ・・・俺の姿、お兄ちゃんに見えるのか? 恭成 』
「うん♪大きいお兄ちゃん♪  僕 ひろにぃ好きぃ♪」




鏡に顔を摺り寄せる・・・
お、おい・・・ 俺は