女装のままではあるが、俺は久しぶりに屋敷の前に立っていた。
結局蛇の舌は俺の中から外れることはなかった、今も時折内側から舐められる感触に鳥肌が立つ。
なにやら、騒がしい・・・牢の方だ、屋敷の見張りもてんてこ舞いらしく、難なく入り込めた。
俺は、女装したまま、気配を窺い、牢に近付くと、丁度俺の娘達が、見覚えのある侍女からあの見張りに引き継がれ牢から、足早に他の部屋へ移動していく所だった。
薙刀を手にした侍女たちに、屈強な男達は止められ押し問答している。
俺は、先程の侍女に見咎められ、苦しい言い訳をした。
「あの・・・このお屋敷に御子が生まれたと聞きまして、お手伝いに上がろうと・・・」
「お手伝い?・・・・・ 試験に落ちたの貴女、まぁ、仕方ないわ、こちらにいらっしゃい」
そうか、俺・・・・女装のままだった。
「貴女薙刀は使えて?」
「は?なぎなた」
「・・・・・その体の大きさなら、使えなくても何とかなるか・・・ふっ」
「えっと・・・」
「いいわ、この際・・・あなたに仕事を上げる」
「はい」
「男の赤子を誘拐してらっしゃい」
「は? 誘拐って・・・」
「いい事、身寄りのない赤子よ・・・さぁ早く、夕刻までに戻ってらっしゃい良いわね」
「あ、あの・・・赤子・・・あのぉ・・・」
「早く行く!」
薙刀を俺に向け・・・危ないって・・・行きます、行きますって・・・
仕方なしに・・・俺は物置に隠れて・・・座り込み着物の裾を捲くり、股間を曝け出した。
蛇が俺のものを飲み込んだままだ・・・
「おい、仕事だ・・・皇子の変わりになれ、男の赤子が必要なんだ」
急激に痛みを感じた!!痛みの元は、二つの膨らみの部分だ!!潰されるような痛み!!
「ぎゃぁっ!!」
俺は口を手でしっかり押さえ、それ以上悲鳴を上げそうになるのを抑えた。
痛みはますます酷くなり全てを吸い出されるような苦痛を味わった。
蛇は黄金色に発光し、眩しくて目を瞑った。
「げっ!!」
赤子が・・・それも可愛いのが付いてる男の赤子が、俺のモノの鈴口から管が伸び、へその緒に繋がっている。
「仕事だ、用意はいいか」
赤子は泣きもせず、目を開け、にこりと笑った。 不気味過ぎる。
管を掴み、引き抜こうとすると強烈な痛さ・・・無理、俺には無理・・・痛すぎる。
涙が流れ、俺は・・・そこでも挫折した。
何を思ったのか赤子は、俺の変わりに管を手で掴み、管を引き抜いた。
「ぎゃぁああああぁぁぁぁっ!!!」
あまりの痛さに、目の前が真っ暗になり、俺は意識を手放した。
胸の辺りを生暖かい何かが這っている・・・
俺は、目を開けると、赤子が俺の胸の粒を口に含み音を立てて吸っていた。
「乳は出ないよ、俺は」
赤子の目が潤み、泣き出してしまった。 その子を抱っこし、あやしながら考える。
男の赤子だ・・・どこの子だっけ?
急速に思い出した。 そうだ、俺・・・
着崩れた着物を整え、物置から外へ出ると辺りは薄暗くなりかけていた。
夕暮れが迫っている。
「やばい!!」
侍女に教えられた場所に、俺は赤子を抱いて走った。
「・・・っ・・貴女、間に合ったね、良かった。 さぁ、その子をおよこし」
変わりに大きな風呂敷包みを渡された。
「これを何処かの鎮守様に届けておくれ」
「何処かって、どこの・・・」
「どこでもいいから、ここから遠く離れた神の御園へ」
「・・・・・・中身はなんですか、結構・・・重いですけど」
「いいからっ、大切に育ててもらうように、手紙と少し金子も入れてありますから、早く行きなさい!」
蹴飛ばされそうになりながら、俺は屋敷を追い出された。
「えっと・・・」
どうしよう、俺の息子を助け出さなきゃいけないんだけどなぁ・・・
町中を歩きながら、手に抱いた大風呂敷包みが微かに動いた。
えっ・・・もしかして、マジに?!
物陰に隠れて、大風呂敷を少し広げ、確認すると中身は赤子だった。 俺の子・・・かな。
マユ、それとも菊か?俺の息子を産んでくれたのは・・・
俺の顔がほころんだ・・・初めての息子だ・・・俺の息子。
何だ、俺・・・ちゃんと役目を果たせたらしい。
俺は護の待つ村へと道を急いだ、何処かへ泊まる余裕はない。
夕暮れから宵闇が迫っている。 綺麗な満月だった。 月明かりを頼りに、道を急いだ。
一刻も早く、屋敷から遠くへ行かなければ・・・
山道に入ったところで、急に激痛が走り、俺その場にうずくまった。
股間が痛い・・・痛いったら、痛いんだ。
我慢できずに股間を曝け出すと、痛みに縮こまったモノの先から出血していた。
両手で押さえ込むと、少しだけ痛みが和らぐような気がする。
コレじゃ一歩も動けない・・・ここで野宿するしかないか・・・
周りは、うっそうと茂る森が続いている。
寒くなってきたなぁ・・・火を焚こうか・・・だけど目立っちまうか・・・
「こんな所で自慰しているとは、しょうがない奴め」
「えっ」
木々の間から現れたのは、旅装束の護だった。
「な、なんで・・・迎えに来てくれたのか」
「湧起、浮気しなかったか」
俺の両手をひっぺがえした。
「いたたっ、痛いって」
「・・・・・・・・・・」
俺の股間をまじまじと見詰め、目を細めると俺のものに吸い付いた!!
貝の空に入った軟膏のような物を俺のモノにグリグリと塗りつけている。
「ひっ!!やめっ、マジ痛い、痛いんだ・・・まもる、嫌だ・・・痛い、痛いぃ!!」
「・・・・・・すまない湧起、治癒の薔薇から作った軟膏だ、少しの我慢だから」
塗りつけられた軟膏が、我慢できない程しみた。
「コレがお前の息子か」
大風呂敷包みに包まれたままの男の赤子を腕に抱えた。
満腹な様子で、すやすやと寝息を立てている。
「あぁ、そのようだ・・・俺は妻達に会うことも出来なかったが、侍女が・・・」
「那奈か・・・こういう悪知恵・・・いや・・・機転が利くのは那奈くらいだろう」
護は思い出すようにして苦笑している。
「あぁ確か、そのナナだ。 何処かの鎮守様に預けて大切に育ててもらうようにって手紙と金子を・・・」
「湧起、村へ戻ってきてはいけない・・・わかったろう、こんな目にあって・・・息子も同じ運命に遭うのだぞ、村には戻るな・・・息子を連れて来てはダメだ」
俺に向き直り、真剣な表情で俺を諭す・・・もう必死って感じ。
「だって姫さまが・・・」
俺のモノをぎゅっと掴んだ。
「ひっ・・・ってぇ、痛い・・・護」
「ここに何されたか、わからないのか、湧起」
「・・・・・・何って、物凄く痛かったよ、気絶する位・・・出血もしたしさ」
「お前はもう、子は作れないんだぞ」
キツク目を瞑り、俺の肩を掴む手が震えている・・・護・・・
「え?・・・何言って・・・」
「精巣を採取されたんだ」
「精巣・・・」
俺はマジマジと自分の股間を見詰めた・・・俺は、もう子が作れない・・・のか。
「お前の息子、餌食にされて我慢できるのか」
「・・・・・・・無理だ」
「ならどうしたい」
「けど、そんな事したら、神官である護はどうなるんだよ」
「何故、俺が村から遠く離れ、ここに居ると思う?」
「そうだ、どうしてここまで来れたんだ? 神官って、村から出れないんじゃ・・・」
「俺も採られたんだ、ここを・・・だから、お前を迎えに村を離れる事を許された」
「なっ!!」
そんなっ、そんな事!! 護のあの立派な・・・俺は護の股間に触れた・・・ん?
立派に立っている・・・んだけど・・・
「あの・・・護?」
「ん? どうした」
「立ってるよね・・・」
「あぁ、立つことは出来るが、子種がなくなったんだ、まぁ・・・俺には必要がないしな」
「・・・・・・」
「俺は、湧起がいればいい」
「でも、神官は・・・」
「俺達が行方をくらました後、適当に見繕うだろうさ、まぁ当てにしていた お前の息子を誘拐されて、激怒するだろうけどな」
「さぁ、ここも危ない・・・移動するぞ、歩けるか湧起」
「あぁ・・・なんとか」
よろけながら、立ち上がった。
護が手当てしてくれたおかげで、少し痛みは遠退いた気がする。
護に抱っこされ、赤子はすやすやと眠っている。
俺達三人は、宛もなく、旅路に出た。
旅支度の男と女装した俺、大風呂敷に包まれた赤子の3人だ。
子連れの夫婦に見えるかな・・・
護の子種を採られるときに、土地姫神と、どんな事したか、思うと複雑な気持ちになるが・・・
結果的に護を俺に返してもらった事に変わりはない。
俺の子を儲ける事は・・・もう出来ないとしても・・・充分だと思う。
護の立派なものは俺だけのものだ・・・もう誰にも触れさせやしない。
俺の体を気遣いながら、護は歩みを進める。
月明かりは俺達を優しく照らしていた。
・・・・・・これからの俺達に、幸多かれと・・・・・・・
あるセル クウェイクす 完