第10章 時間軸 その85 揺らめく炎14 春の記憶13
しばらくまどろんだ後、和哉は愛しい煌治の頬にキスを落とし、行って来ますと囁いた。
今度は足枷を篭にはつけず、牢をしっかりと施錠して屋敷に戻った。
屋敷の風呂場で汗を流し、身支度を整え、来客のための接待に備える。
火の民たちが、ほとんど用意はしてくれたが、手抜かりのないように最終チェックした。
何しろ敵対する風の民の後継者がやってくるのだ。
随分長い間TOP不在のままだったが、噂で 『 風 』 に後継者が現れたと聞いた。
聞く所によるとまだ若いらしいが・・・上手く話を合わせる事が出来るだろうか、緊張が走る。
午後2時をまわった頃、彼らは現れた。
年長者と思える男は光月一徳(こうづきかずのり)と名乗り、俺と同じ16歳だ。
彼は少年を連れていた。少年は光月真雄(こうづきまお)と名乗った。
驚いた事に、風の後継者はその少年だった。 歳は、12歳だとか・・・
一見、可愛らしい感じがしたが、緊張しているのであろう・・・
屋敷内をキョロキョロと見回して、いろいろ質問された。
まぁ・・・風の民の屋敷とは雰囲気も違うだろうさ。
その実、俺は一徳と言う男と話が弾んだ。 柔らかい雰囲気の持ち主だった。
どちらかと言うと女性っぽい感じがする。いや、それは失礼か。
「あっ!!」
少年が突然声をあげ奇妙な行動に出た。席を立ち上がり、一目散に庭に駆けて行った。
「あっ、真雄、ダメだよ・・・戻っておいで」
一徳が焦って真雄を呼び止めようと立ち上がるが、聞えているのかいないのか・・・
多分後者の方だろう。
俺が少年が走っていく方を見やると、麗影が、降り立つ所で、徐々に影が濃くなる。
少年は麗影の現れるまん前に立ち止まった。
・・・麗影は目を見開いた。 かなり驚いているようだ。
「麗影、そちらが風の後継者の真雄さんだ」
「失礼いたしました。 ようこそ、おいでくださいました真雄様」
斜め45度にしっかりとお辞儀をした麗影に、少年はニッコリと微笑んだ。
「こんにちは、リエイさん、ねぇねぇ、リエイさんて忍者? 僕ねぇ、僕もがんばってるんだけど、まだ高く飛べないんだ」
「そうでございますか・・・真雄様は、いつもどんな遊びをされていますか」
服の端を少年に掴まれて、少し困る・・・客人に不快な思いをさせるわけにもいかない。
年端もいかない少年にどう対処すべきか、和哉様を見やると、くすくすと笑っている・・・
助けてくださいよ・・・無理ですか・・・そうですか。 麗影は溜息を飲み込んだ。
仕方がない、緊急の仕事でもなかったため、後回しにして少年の相手をする事にした。
「ん・・・ 人数がいるときは缶蹴り一人の時は木登りかな。 風の子は飛んだり走ったりが基本だし もちろん基礎体力作りもやってるけどね」
「子供は風の子といいますものね、元気が一番ですよ」
「ねぇリエイさん、僕と一緒に飛んでぇ」
「えっ」
どうすべきか、和哉様の方をみやるが、全くこちらを見ていない。
それは、この少年の相手は私に一任するという事なのだろうか。
「わかりました。少しお待ちくださいませ」
「和哉様、マオ様と少し散歩をしてまいります」
声をかけると和哉様は、片手を上げて頷いた。
「では、私にお掴まりください、マオ様」
「うん!」
キラキラと目を輝かせて、少年は私の体に抱きついた。
麗影は、精神を集中させ、瞬間庭先から、裏山の木の上に飛んだ。
「うわっ あぁっ凄い、ここどこ!!」
「屋敷の裏にある山でございますマオ様、ここから見る眺めは美しいでしょう、私は子供の頃 ここでよく兄達と遊びました」
「うんっ!! そうなのぉ いいなぁ」
「あまり、乗り出されると落ちてしまわれますよ」
興奮気味の少年の胴にしっかり手を回して支えた。
「では、次に参りましょうか掴まってください」
「うん」
瞬時に、草原に出た。体を覆ってしまうくらい丈の長い草が生い茂る中、
少年は興奮気味に走り出した。
「わぁ〜い!麗影さん鬼ごっこしよう10数えたら僕を見つけて!」
「あっ、足元お気をつけください、マオ様」
溜息を付き、数え出した。
「マオ様、わかりました。い〜ち、に〜い、さ〜ん・・・・・・・10!!マオ様、行きますよ!」
・・・・・・見渡す限り、丈の長い草原・・・屈めばどこだって隠れられる・・・どうする。
・・・麗影は高く飛び上がりながら辺りを見回す。
瞬間移動の繰り返しで飛んでいく事は出来ても、空中で自分の身を留まらす事が出来ない。
・・・・・不利だった・・・・
透視能力が欲しい・・・感知能力でもいい・・・
懸命に見つけようと草を掻き分けて進むが、痕跡が見当たらない。
時間だけが過ぎていく・・・夕暮れが差し迫り、いい加減焦る。
「マオ様ぁ〜〜〜〜〜降参です! 出てきてくださいませ! マオ様ぁ〜〜!!」
「・・・・・」
「マオ様ぁ〜夕暮れです。 もう戻らなければ お腹が空いたでしょうマオ様ぁ!!」
「・・・もう、麗影さんたら、根性ないなぁ、お腹も空いたし、じゃ帰ろうか」
大人びた声がすぐ後ろから聞こえ、ぎくっと肩を震わせた。
「そ、そこにいらしたんですか、脅かさないでくださいよ」
「くすくす。 麗影さんて・・・結構臆病なんだね」
「あはは・・・ばれました? さぁ、お掴まりくださいマオ様」
「うん」
麗影は、火の民の屋敷に瞬間移動した。
「さぁ、つきました。マオ様」
「ありがとうございました。麗影殿」
客人が駆け寄ってきて お礼を言われ、照れた。
「いえ、遅くなりまして申し訳ありません」
「真雄、家へ帰ろう。 和哉殿、有意義な時間を過ごさせていただきました。 ありがとうございます」
「こちらこそ、またのお越しをお待ちしております。 一徳殿、真雄殿」
一通り挨拶を済ませた二人は、帰っていった。
「麗影、ごくろうだったね。 ありがとう」
「はい、私でお役に立てて嬉しく存じます」
頷きながら、和哉様は戻っていかれた。 溜息を付き、麗影は仕事に戻る。
時間を大幅に遅れてしまったけど、今日中にやっておかなければ・・・
夕暮れの空を見上げ、麗影は飛び立った。
( 第10章/エリア1 目次へ )
今度は足枷を篭にはつけず、牢をしっかりと施錠して屋敷に戻った。
屋敷の風呂場で汗を流し、身支度を整え、来客のための接待に備える。
火の民たちが、ほとんど用意はしてくれたが、手抜かりのないように最終チェックした。
何しろ敵対する風の民の後継者がやってくるのだ。
随分長い間TOP不在のままだったが、噂で 『 風 』 に後継者が現れたと聞いた。
聞く所によるとまだ若いらしいが・・・上手く話を合わせる事が出来るだろうか、緊張が走る。
午後2時をまわった頃、彼らは現れた。
年長者と思える男は光月一徳(こうづきかずのり)と名乗り、俺と同じ16歳だ。
彼は少年を連れていた。少年は光月真雄(こうづきまお)と名乗った。
驚いた事に、風の後継者はその少年だった。 歳は、12歳だとか・・・
一見、可愛らしい感じがしたが、緊張しているのであろう・・・
屋敷内をキョロキョロと見回して、いろいろ質問された。
まぁ・・・風の民の屋敷とは雰囲気も違うだろうさ。
その実、俺は一徳と言う男と話が弾んだ。 柔らかい雰囲気の持ち主だった。
どちらかと言うと女性っぽい感じがする。いや、それは失礼か。
「あっ!!」
少年が突然声をあげ奇妙な行動に出た。席を立ち上がり、一目散に庭に駆けて行った。
「あっ、真雄、ダメだよ・・・戻っておいで」
一徳が焦って真雄を呼び止めようと立ち上がるが、聞えているのかいないのか・・・
多分後者の方だろう。
俺が少年が走っていく方を見やると、麗影が、降り立つ所で、徐々に影が濃くなる。
少年は麗影の現れるまん前に立ち止まった。
・・・麗影は目を見開いた。 かなり驚いているようだ。
「麗影、そちらが風の後継者の真雄さんだ」
「失礼いたしました。 ようこそ、おいでくださいました真雄様」
斜め45度にしっかりとお辞儀をした麗影に、少年はニッコリと微笑んだ。
「こんにちは、リエイさん、ねぇねぇ、リエイさんて忍者? 僕ねぇ、僕もがんばってるんだけど、まだ高く飛べないんだ」
「そうでございますか・・・真雄様は、いつもどんな遊びをされていますか」
服の端を少年に掴まれて、少し困る・・・客人に不快な思いをさせるわけにもいかない。
年端もいかない少年にどう対処すべきか、和哉様を見やると、くすくすと笑っている・・・
助けてくださいよ・・・無理ですか・・・そうですか。 麗影は溜息を飲み込んだ。
仕方がない、緊急の仕事でもなかったため、後回しにして少年の相手をする事にした。
「ん・・・ 人数がいるときは缶蹴り一人の時は木登りかな。 風の子は飛んだり走ったりが基本だし もちろん基礎体力作りもやってるけどね」
「子供は風の子といいますものね、元気が一番ですよ」
「ねぇリエイさん、僕と一緒に飛んでぇ」
「えっ」
どうすべきか、和哉様の方をみやるが、全くこちらを見ていない。
それは、この少年の相手は私に一任するという事なのだろうか。
「わかりました。少しお待ちくださいませ」
「和哉様、マオ様と少し散歩をしてまいります」
声をかけると和哉様は、片手を上げて頷いた。
「では、私にお掴まりください、マオ様」
「うん!」
キラキラと目を輝かせて、少年は私の体に抱きついた。
麗影は、精神を集中させ、瞬間庭先から、裏山の木の上に飛んだ。
「うわっ あぁっ凄い、ここどこ!!」
「屋敷の裏にある山でございますマオ様、ここから見る眺めは美しいでしょう、私は子供の頃 ここでよく兄達と遊びました」
「うんっ!! そうなのぉ いいなぁ」
「あまり、乗り出されると落ちてしまわれますよ」
興奮気味の少年の胴にしっかり手を回して支えた。
「では、次に参りましょうか掴まってください」
「うん」
瞬時に、草原に出た。体を覆ってしまうくらい丈の長い草が生い茂る中、
少年は興奮気味に走り出した。
「わぁ〜い!麗影さん鬼ごっこしよう10数えたら僕を見つけて!」
「あっ、足元お気をつけください、マオ様」
溜息を付き、数え出した。
「マオ様、わかりました。い〜ち、に〜い、さ〜ん・・・・・・・10!!マオ様、行きますよ!」
・・・・・・見渡す限り、丈の長い草原・・・屈めばどこだって隠れられる・・・どうする。
・・・麗影は高く飛び上がりながら辺りを見回す。
瞬間移動の繰り返しで飛んでいく事は出来ても、空中で自分の身を留まらす事が出来ない。
・・・・・不利だった・・・・
透視能力が欲しい・・・感知能力でもいい・・・
懸命に見つけようと草を掻き分けて進むが、痕跡が見当たらない。
時間だけが過ぎていく・・・夕暮れが差し迫り、いい加減焦る。
「マオ様ぁ〜〜〜〜〜降参です! 出てきてくださいませ! マオ様ぁ〜〜!!」
「・・・・・」
「マオ様ぁ〜夕暮れです。 もう戻らなければ お腹が空いたでしょうマオ様ぁ!!」
「・・・もう、麗影さんたら、根性ないなぁ、お腹も空いたし、じゃ帰ろうか」
大人びた声がすぐ後ろから聞こえ、ぎくっと肩を震わせた。
「そ、そこにいらしたんですか、脅かさないでくださいよ」
「くすくす。 麗影さんて・・・結構臆病なんだね」
「あはは・・・ばれました? さぁ、お掴まりくださいマオ様」
「うん」
麗影は、火の民の屋敷に瞬間移動した。
「さぁ、つきました。マオ様」
「ありがとうございました。麗影殿」
客人が駆け寄ってきて お礼を言われ、照れた。
「いえ、遅くなりまして申し訳ありません」
「真雄、家へ帰ろう。 和哉殿、有意義な時間を過ごさせていただきました。 ありがとうございます」
「こちらこそ、またのお越しをお待ちしております。 一徳殿、真雄殿」
一通り挨拶を済ませた二人は、帰っていった。
「麗影、ごくろうだったね。 ありがとう」
「はい、私でお役に立てて嬉しく存じます」
頷きながら、和哉様は戻っていかれた。 溜息を付き、麗影は仕事に戻る。
時間を大幅に遅れてしまったけど、今日中にやっておかなければ・・・
夕暮れの空を見上げ、麗影は飛び立った。
( 第10章/エリア1 目次へ )



















